戒め
「自分の感受性くらい」
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
茨木のり子さんは、仕事上で知っていたので、亡くなったのはやはり残念です。今、中学生の教科書に「わたしが一番きれいだったとき」という詩が載っているのです。それも来年度には変わっちゃうから残ってて欲しいな〜と思うんですが…この詩も、胸にズシッと来る詩です。
それで、「自分の感受性くらい」というこの詩。
やはり、何か心にずっしりとおもりを置かれたような、身が引き締まったような気がしました。第一連の「みずから水やりを怠っておいて」とか、第五連の「わずかに光る尊厳の放棄」。そして最後の「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」という何とも強い言葉。
詩を読んで何を思うかは、その人の「感受性」次第。でも、その感じる力さえも放棄され、守ることも出来なくなっているような今という時代。何かしら危機感を抱かずにはいられません。
いつでも心の片隅に置いて、自分の戒めとしておきたい詩です。
ご冥福をお祈りいたします。
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